リスキリング導入の課題と対策

リスキリングを企業内に導入する際、一般的に以下のような課題があります。

【リスキリング導入のハードル】
・コスト面の課題

リスキリングを導入するには、企業にとって必要な予算を確保することが課題です。リスキリングに参加する社員に対して、給与や手当の支払が発生することもあり、財務面での課題が生じる可能性があります。

・リソースの課題

また、リスキリングには時間や人材、設備などのリソースが必要です。企業がこれらを確保できない場合、リスキリングの実施に支障が生じるリスクがあります。

・社員の意識の課題

さらに、リスキリングに参加する社員が、スキルアップやキャリアアップの可能性について認識していない場合、あるいは学ぶ意欲が低い場合、リスキリングの実施にも課題が生じる可能性があります。

・組織文化の課題

加えて、組織文化や風土が、新しいスキルや知識を習得することに対して消極的な態度を醸し出している場合もあります。

・リーダーシップの課題

リスキリングを実施するには、経営陣やマネージャーがリーダーシップを発揮し、社員を指導することが欠かせません。しかし、リーダーシップが不十分であったり、リスキリングに関心を持っていなかったりする場合、リスキリングの実施に支障が生じることがあるため、リーダーシップの確保も重要な課題となります。


【学ばない大人問題】

先に「社員の意識の課題」に挙げたように、大人はなかなか学ぼうとしません。国際的には日本人は「勤勉」のイメージで知られている、と思いきや実は年を重ねるにつれ国際的にも圧倒的に「学ばない国民」となっています。

ビジネスの現場で、組織内の人材の割合を示す際、「2:6:2」という言葉を用いることがあります。これは、意欲的に働く優秀な層が20%、平均的に働く層が60%、意欲やパフォーマンスの低い層が20%いることを示しています。

つまり、学ぶのは常に「上の2割」だけで、残念ながら「残りの8割」は学ぼうとしない、ということです。

リスキリングの多くの課題は、この問題に集約されている、といっても過言ではありません。悲しいかな、日本はGDPにおける人材投資の規模が先進国の中でも極めて低い国です。加えて、個々人が学び続ける習慣をほとんど身に付けていないのです。

パーソル総合研究所の「グローバル就業実態・成長意識調査(2022年)」では、社外学習や自己啓発を「何も行っていない」人の割合は先進国の中で断トツ1位! 52.6%のビジネスパーソンが読書すらしていないという悲しい実態が明らかになっています。

この傾向がシニア社員の場合、さらに顕著に現れているのですから、人事担当者の悩みは計り知れません。

大人が学ばない理由として、

・業務負担が増加し忙しい
 日々の業務に追われていて、リスキリングに参加するための時間的余裕がない。

・業務に関する自信がある
 自分が持っているスキルや知識で業務を遂行できている、と感じているため、リスキリングに興味を持たない。

・年齢や経験
 年齢や経験があるため、自分の持っているスキルや知識が十分だと思い込んでいる。

・変化への抵抗
 変化や新しいことに対して抵抗感を持っている人は、リスキリングに対しても消極的になる傾向が強い。

・企業文化の問題
 企業の風土や文化が、学びや成長を重視するものではない場合、社員もそれに合わせてリスキリングに対して消極的になる。

といったことが、よく挙げられていますが、最もネックとなっている理由は何なのでしょう?


【学ばない大人の本音・真の原因】

学ばない社員の中には「実際に学んだって、それが反映されない(ex.昇給しない)じゃないか!」と感じている人もいます。他には、年齢が上がるほどに、古い体質の会社や業界に対する不満から、リスキリングに消極的な考え方を持ってしまう人もいます。

さらには、会社がDXや変革を通じたビジネスロードマップを明確に示していない、社員に対して具体的な取り組みを促していない、といったことも問題視されています。

ですから、リスキリングを成功させるためには、企業側が社員に対して、各人が捨てるべきものや習得すべきものを明確にすることが不可欠です。

企業側は、社員に対して誠実で具体的なロードマップを示すのです。そして社員はそのロードマップに従い、自分はどの様なことをどの様に学ぶのか、仕事に活かすのかについて、宣言をするのです。

このような会社と社員のコミットメントこそ、主体的な学びのスタート地点となります。越境学習の機会や学び直しのコースを用意することも重要ですが、まずは会社と個人が共に腹をくくること、そしてコミットメントをすることが大切だと考えます。

『社員が学ばない』と嘆く前に、経営層、管理職、リーダー、人事、経営企画部門が率先垂範すること、これがスタートなのではないか、と当社は考えています。