人的資本経営とは?

人的資本経営とは、人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことによって、企業の中長期的な価値向上につなげる経営のあり方です。

2020年9月、経済産業省による「人材版伊藤レポート」※の公表を発端に、日本企業の間で人的資本情報開示の重要性が認識されはじめました。

※「人材版伊藤レポート」とは「持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会」の通称です。持続的な企業価値の向上に向けて、“経営戦略”と連動した“人材戦略”をどう実践するか、という点についてまとめられています。

また、2022年5月には人的資本経営実践のポイントや工夫を示した「人材版伊藤レポート2.0」がリリースされています。

更に、人的資本情報の開示の方向性については、2022年8月30日、内閣官房が「人的資本可視化指針」を策定、公表しました。その中では、2023年度から日本の上場企業に対して、人的資本に関する情報開示が義務付けられる、とされています。

【従来の経営と人的資本経営との違い】

従来の経営では、人材は単なる「資源」として扱われていました。極端な表現をすると、必要な場合に必要なだけ人材を雇用し、不要になれば解雇する、といった企業側の都合に合わせて活用する形です。

一方、人的資本経営では、人材を企業の「資本」として捉えます。経営の中核的な価値と位置づけます。つまり、企業が所有する有形資産や無形資産の一部として、企業価値を創造する重要な要素であると考えます。

人材を資本と捉えると、企業側は人材を単なるコストとしてではなく、長期的な視点での投資として捉えることができます。

人材に投資することで、その人材の能力やスキルを向上させ、企業にとってより高い付加価値を生み出すことができます。

人材は、知識、スキル、経験、人間関係、信頼関係など、様々な形で企業に貢献します。

そのため、人的資本経営では、人材の能力を最大限に引き出し、育成することが、企業成長に不可欠であると認識されています。

具体的には、採用や育成、評価、報酬、キャリア開発などの面で、人材に対して投資を行います。この様にして、企業と人材の双方にとっての利益を追求することを目指し、人材の成長と企業の成長を同時に進めていくことが可能となるのが人的資本経営です。