企業研修における、参加者同士のフィードバックについて

企業研修におけるフィードバックがヨワヨワ問題

企業研修のプロデューサー(企画設計や運用支援)や、講師として登壇していて感じることがあります。それは、「社員同士のフィードバック力がヨワヨワ!」という点です。

受講生同志、ペアやグループでワークなどをしますね。

そのワークを実施後に、実施者に対して、観察者(相手)がその実施者の状態や結果について、コメントフィードバックをする場面です。

あのコメントが【ヨワヨワ】であまり効果的ではないな、と感じているのです。

ヨワヨワとは、具体的に言うと、相手に対して、良いところも、課題となる点もしっかり捉えず、指摘せず、ごまかしてお茶を濁して、微妙な空気感を作って終わっている状態です。

結果、相手のためにもなっていない、発言した自分も時間を費やした意味がない、こう感じるのです。

例えば・・・

「全体的にいいと思います」

=全体的に良いならば、では逆にどこか問題があるはず!そこを指摘しないでどうするの?

「特に問題ないと思います」

⇒本当ですか?自社のお客さんから、あるいは上司から見ても問題ない、と断言できますか?

「あえて課題を上げるとすれば、声のボリュームが大きければ良かったと思います」

=課題を上げたのはいいけど、もっと具体的な指摘はできないかな・・・?

今の時代や社風を如実に表す研修コメントフィードバック

この研修における、ロープレなどのコメント、フィードバック

実は、その時代性や社風がハッキリと現れてくるな、と感じています。

時代と言えば、世代に依るコミュニケーションの特徴が色濃く出ます。

最近は、若い世代の方は、失敗したくないから、余計なことは言わない

なんとなく、相手に嫌われるのが怖い?嫌?面倒?

こういった傾向は、業種や規模を問わず、多かれ少なかれあります。

また、企業の社風や部署の特徴も色濃く出てきます。

お役所のような硬い仕事をしていたり、メーカーのように着実に進める業界は

やっぱり控え目であったり、余計なことは言わない傾向にあり

逆に、営業部門やサービス業界などは、コミュニケーションに長けているのか、フィードバックも多彩でしっかりしていることも多いように感じます。

研修の目的、フィードバックをさせる意味目的の再認識を

時代性や社風などに依る違いがあるとはいえ、私は、このようなぬるま湯の研修フィードバックを放置しておくべきではないと考えています。

なぜなら、研修時間は企業が人材に投資している時間であり

フィードバックをしてもらうことには、そこに意味があるからしているものであり

フィードバックする方、される方、それぞれに学びがあるからであるはずです。

営業研修ならば、お客様先での相手の普段は聞けない反応・意見が聞ける

部下育成研修ならば、普段は返してこない部下の声を聞ける

こういった、貴重な事前の「素振り」に対する評価の機会です

修正するための貴重な貴重な機会です。

つまり、研修の中で、フィードバックコメントをする意味、価値、目的を

受講生が理解しきれていないのです。

または、理解していても、言いづらい雰囲気、環境なのかもしれません。

とすると、これは講師や事務局などの課題となります。

講師がしっかりフィードバックの意味や目的を腹落ちさせていない

事務局(人事)側が、普段からこうしたフィードバックの価値や文化を浸透する

研修や人材育成を放置してきている(かもしれない)

のです。

フィードバックを真摯にする価値とは?

研修でのフィードバックには

・実施者に対して、第3者評価を与える

 =相手が気付いて(意識して)いない点を気付かせる(ジョハリの窓)

・観察者自身も、観察眼が鍛えられる

 =メタ認知と、観察視点など、自分のスキルも向上する

・副次的効果として、実施者と観察者に信頼感が生まれる

 =お互いの課題や問題などの自己開示に依る、心理的距離の接近

などなどの効果があります。

そして、これは研修の時だけの効果ではありません。

現場での学びや経験学習、上司部下のOJTにも必ずや役立ちます。

「相手を思って、自分の事は棚に上げて、厳しいことを伝える」

これこそが、究極の愛情=慮る

ということなんだと固く信じています。