お客様の課題と弊社のご支援全体像
お客様は、長い伝統を持つ食品メーカー様。長年、消費者に愛される商品に加えて、最近は機能性食品や食品を超えたジャンルへの原料提供など、幅広く事業を行っておられます。Brewとは、人事部とのお付き合いを通じて、階層別研修の一部をご提供していました。
そのご縁で人事部さま営業企画部をご紹介いただき「より実態に即した営業人材の育成ができないか?」と相談をいただきました。新入社員時の一般的な研修と現場でのOJTで身につけるようにしていたが、お取引先の種類も増え、ご依頼が多様化・行動化する中で、もう一段上の営業スキルを習得すべき、という課題が出てきたとのことでした。
また、全国に営業所などを張り巡らせている関係上、地方の社員には学ばせる機会がどうしても少なくなってしまう、また予算も多くかかってしまう、という教育機会の課題も別にありました。
その他、会社が掲げる事業戦略において「DX人材の育成」が重要課題となっていました。ただし、この会社ではIT分野は情報システム部門とベンダーに任せている面が多く、いきなり社員にITだ!といっても、無反応だったようです。また、人事部としても、DX人材の概念は理解できるものの「では何を、どこから手を付けたら良いのか?」という状態でした。こういった、課題に対して、私どもでできる範囲、そして私どもも、共に創造していく形でご支援させて戴く事になりました。
ご提供サービス①:現場に即した実践的な「営業研修」
まず取り組んだことが、現場の実態に即した営業研修の開発でした。最終消費者の購買行動も通販の進展などで、小売業自体の競争が激化し、メーカーとしての取り組みをより高度化していくことが背景にあると感じました。
そこで、私どもではメーカーと小売業との取り組みに強い方や、業界出身者など3名の講師候補をピックアップし、まずは講師側にヒアリングいたしました。講師自身の考え方は?この課題と未来をどう組み立てるか、課題への対応策(仮説)を聞きながら、候補講師を選定していきました。
次に、この候補講師とクライアントの面談を行い、色々と案を出し尽くしてもらいました。現場の社員は何がボトルネックとなっているのか、小売業のニーズはどこにあるのか、こうしたフリーなディスカッションを通じて、リアルな商談現場を模したロープレを多数行う研修カリキュラム案が生まれました。インプットをする以上に、営業現場での“あるある”を解消することを主眼にプログラムされました。結果この研修は、受講したスタッフから「研修という概念が変わった」という声がでる好評なものとなりました。講師への信頼、内容への満足もさることながら、より現場で思い出される、実践される内容となったからでした。
この研修は、その後もブラッシュアップされ、本部担当と個店担当者の連携や、マーケティング部門や物流部門との連携までと、実際の業務に近い内容での研修となり、「研修と実務がまさに連動した」形でのプログラムとして、現在も継続実施されています。
ご提供サービス②:俳優を活用した「eラーニングコンテンツ開発」
次に、営業企画部さんからご相談いただいた事が、地方にいる社員の教育機会の創出についてでした。東京に研修のため集めると、時間もコストもかかるため、機会が減ってしまう、だったら、この好評な研修の一部をeラーニングに落とし込めないか、というものでした。(当時は、2017年コロナ前)
いくつかの案がありました。単純に集合研修の模様を撮影するだけの案、eラーニング用にリアル研修をアレンジして撮影するなど、どれも一長一短ありました。特に、eラーニングは「見ない」「活用されない」というリスクがあるので、どんな内容だったら視聴してくれるのか!?に議論を割きました。そこで先方の社内から出た意見は「先輩の成功例なら見たい」という一言でした。そこで、社内で成功事例を集め、その成功の原因を整理することに着手しました。ただ、この状態で、どういった映像のeラーニングにするか?がハッキリしていませんでした。当初は、その成功事例を社員が語ればいいのではないか、という案もありましたが、結果は、俳優に営業社員役を演じて頂き、講師が解説を入れる、という形になりました。社員ではなく俳優が演じることによりバイアスが減ること、より客観的に視聴できるからです。そして何より、俳優に役を仕込むにあたって、セリフを創らなくてはなりません。この台詞を開発する過程でノウハウを抽出する必要があり、このノウハウがとても大事でした。
この動画コンテンツは、社内のLMSに掲載され、5年以上たった今も活用されています。
ご提供サービス③:暗黙知も顕在化させた「商品開発マニュアル」
続いて、人事部さまから商品開発部をご紹介いただきました。本社以外の支店や営業所でも商品開発技術を高めていく課題があり、マニュアルを整備したいとうご相談でした。
実施にあたってはいくつかのハードルがありました。もともと、商品開発部門にも担当品目によっていくつかのチームに分かれていて、マニュアルも様々な形、状態、フォーマットで既存のものがありました。また、社内の規定もあれば法務的、規範的に必要なルールもあり、それぞれが、細切れ状態でありました。つまり一連のフローになっていませんでした。さらに、ヒアリングを続けていくと、どうやら各担当者個人に眠っている暗黙知があり、それらは重要なものもあることが分かってきました。属人化して、かつ基準もあいまいな部分がありました。
そこで、私たちは弊社のネットワークを活用し、商品開発に強いコンサルタントや中小企業診断士を数名募集して、各カテゴリーごとの整理、情報収集(吸い上げ)を行いながら、暗黙知部分を顕在化することに着手しました。同時に、全体をBrewスタッフがプロマネを担当し、まとめていく業務を行うことで、全体最適と個別対応を同時に図っていきました。そして最後には、出来上がったマニュアル自体を、PowerPoint資料コンサルタントに依頼し、見やすさ、わかり易さをアップさせる最終仕上げを行いました。
結果、とてもシンプルでポイントが絞られた商品開発マニュアルを作り上げることができ、支店や営業所単位でも商品開発に取り組む機運や流れが加速化することになりました。
ご提供サービス④:中計に基づく「DX人材要件定義」つくり
会社が掲げる事業戦略において「DX人材の育成」が重要課題となり、「何から、どうやって手を付けていくか」ここを共に道筋を作っていくご支援をさせていただくことなりました。
この時は、まだDX人材育成の情報が世の中にも少ない状態でした。ITとの違い、X=トランスフォーメーションの意味も、私たちもよく分かっていない状態でした。そこで、まずは弊社のパートナーコンサルタントでこの分野に詳しい方数名に、ヒアリングさせていただきました。そこで得た、重要な指針として「ITはツールであって目的ではない」そして、Xのトランスフォーメーションは、単なる改善ではない、といった点でした。私たちもこれらの指針に共感し、その意味を理解して進めようと企画を準備を始めました。しかし「DX人材育成に何が必要か?」という具体論となると、お客様とも話がなかなか進みませんでした。
今なら理解できるのですが、「事業自体をどうX=トランスフォーメーションするのか」、「誰のためのトランスフォーメーションなのか」といった主体やゴールがなければ、どうデジタル人材を育成するかが定まるはずがありません。ゴールがそもそも、事業の変革や付加価値の増大であるのに、IT人材の育成がゴールになっている点、このズレの解消をお客様、特に上層部に理解いただくのに、かなり時間とステップを要しました。
ただ、ここに時間をかけ、人事部さまと一緒に協働させていただいたことで、DX人材に必要な要件とは何か?その具体的な業務内容は?必要なスキルは?といった重要な部分を煮詰めることができたと思っています。単なるデジタル人材の育成ではなく、トランスフォーメーションをイメージしたデジタル人材、ここの違いは大きい、とお客様にはご理解頂いている状態です。
Brewが留意したポイント
今回のお客様に、弊社が留意した点は、以下の3点です。
【1】クライアントの業界理解に徹底的に努めた
人事部さまのご相談から、現場である営業部や商品開発部さまのお話を頂いた時点で今まで以上に、クライアント様の業界構造や変化の背景、商材の特徴などをより調べました。
もちろん、それはより良い提案や価値提供をするためではありますが、一方で「楽しんでやっている」ことでもあります。「なるほど!」という発見や工夫に対する畏怖の念などがあるからです。お客様とともに「発見・挑戦を!」というビジョンのBrewだからこそと考えています。
【2】ご依頼の範囲を超えて1歩先までをご提案
Eラーニングやマニュアルも過去に多数制作を支援してきたからこそ感じることがありました。「作っても活用されない、一部の人だけしか使われない」という完成後の運用課題です。
どうなら、みんなが見る動画にしたい、マニュアルも仕事に欠かせないものにしたい。
そこで、完成後の利用シーンや見る側の心理を考え、話題性や面白さ、価値のPRなどを踏まえたものを開発したいと考えました。
【3】柔軟にパートナー講師などに相談してプランニング
これは私たちの強みの1つですが、様々な業界の、出身者やコンサル、講師など多様な立場の方と仕事を通じてつながっているため、動き出す前に軽いヒアリング、リサーチが可能です。
お客様から相談された際に、まずアタリをつける、仮説を創る、このプロセスを通じて、ご提案の方向性や提供価値を明確にできる点は、お客様にも機動性や多様な選択肢をご提供できているのではないか、と思っております。